2014年8月25日月曜日

目標設定の難易度とバリエーションの意味とは...

皆さんは、「夢」を持っていますか?僕は夢を持ってます。でも、その夢は実現可能なものだと思います。実現可能な夢、それは「目標」と言い換えても良いかもしれませんね。


さて、脳卒中後の麻痺手のリハビリテーションにおいて、僕が用いる手法は「課題指向型訓練」というものです。そう、その名の通り、ある特定の課題を指向する(叶える)ための手法です。


ということはですよ。その課題を決定する行為がとても大切だと言えます。つまり、目標がなければ、その訓練は既に課題指向型ではないと言っても過言ではないはずです。


そして、僕らはその目標を達成するために訓練を提供して行くわけですが、その目標がそれこそ実現不可能な「夢」物語のようなものであったり、逆に、今すぐにでも可能な至極簡単なものであった場合、僕たちはどのような反応を示すでしょうか?


例えば、夢のような目標に向かい続け、出口のないトンネルを走り続けるような錯覚、つまり「達成を予測できない」場合、僕たちは諦めて、行動することを辞めてしまうでしょう。逆に、簡単すぎる目標に対する訓練をずっと続けた場合では、「これが終わったら、この訓練。その次はこの訓練」といった感じで、振る舞いが恒常化してしまい、何とも言えないマンネリ感を生じてしまいますよね。


こういった状況を「学習性無力感」とBernsら(2001)は形容しています。彼らは水とジュースをルーチンで与える易予測課題と与え方をランダムにした難予測課題を実施し、その際のドーパミンニューロンの活動を測定しました(図1)。その結果、易予測課題を実施した方は、ドーパミンニューロンの活動性の低下を認めました。一方、難予測課題を実施した方は、ニューロンの活動性に法則がなく、大きく揺らぎながら、その活動性を保持していました(図2)。


つまり、このドーパミン反応こそが、臨床における無力感であったり、マンネリ感ある可能性を感じてしまいます。さらに、その際にドーパミンが照射される線条体観察しますと、難予測群ー易予測群の脳活動は図3のようになったと報告されています。


これらを鑑みると、学習性無力感を防止するためには、目標を複数設定し、バリエーションを持たせることや、その目標の難易度も達成予測と達成が比較的簡便なものから、かなり難易度の高いものまで、時系列によって、様々なバリエーションを提示することが求められるような気がします。


さらに、毎日の訓練においても同様で、代わり映えのない同じ訓練を続けることが、脳内のこのような反応を引き起こしている可能性を考えると恐ささえ感じます。目標も、そしてその目標を達成するための課題指向型訓練も、段階付けを常に意識し、バリエーションを持って、恒常化を防ぐことが大切なのかもしれませんね(笑




(引用文献)
Berns GS, et al. Predictability modulates human brain response to reward. J Neuroscience 2001;21 (8): 2793-2798